高齢犬の介護

近年、獣医療の進歩や予防医療の普及などにより、ペットの寿命も年々延び、それとともに介護が必要な老犬も増えてきています。
はじめて老犬介護するにあたっては、どのような対応をすればよいのか困惑してしまう飼主様も多いのではないのでしょうか。
飼主様が老犬介護のため寝不足になったり、疲労、ストレスから体調を壊さないように、当院でできうるサポートの方法を考えています。

老犬介護のポイント

老犬介護では主に

  • 食事の介護

  • 排尿や排泄の介護


  • 
シャンプーの介護


  • 歩行の介護



といったことが必要となってきます。


実際にどのような介護が必要となってくるかは、その子の状態や飼い主様の状況によって変わってきます。

何よりも大切なことは飼い主さんも無理せず、老犬介護の生活を楽しく送ることです。

1.食事の介護

老犬になると毎日の食事をどのように与えるかが大切になります。

嗜好性も変化しますし、食べ物を噛む力(咀嚼力)や消化器官が衰えてきます。

フードを食べやすい小粒や半生タイプに変えてあげたり、水でふやかしてあげたりすることで噛む力が弱ってきてもご飯が食べやすくなるでしょう。

また、少し温めて香りをたてたり、とろみをつけたスープをかけて口当たりをよくしてあげることで食欲も増し、楽しい食事の介護が行えることでしょう。

舌の動きが鈍くなりうまく呑みこめないときには、すりつぶしたりミキサーにかけたりして流動食にして与えます。
固さが自由に調整できる栄養価の高い介護食も販売されています。


流動食を与える際はシリンジを使います。
犬歯の脇の歯の隙間からシリンジを差し込み、少しずつ流動食を口の中に入れてあげます。

シリンジ以外にも、吸い口やプラスチック製のドレッシング容器などもお勧めです。
最近では給与用シリンジも市販されています。
頭を支える筋肉も衰えてくるので、食べやすい姿勢になるようサポートしてあげることが必要です。

お座りができる場合は頭を下げなくても食べられるようにお皿を台の上に載せてあげます。


寝たきりの状態でも支えればふせができるのであれば、飼い主さまが正座をして足にはさんであげましょう。
むずかしければ膝枕をするなど頭を少し高くします。

2.排尿や排泄の介護

自然に排尿や排泄できれば良いのですが、体や内臓の筋肉の衰えにより、中腰の姿勢がうまく取れなかったり、おもらしをしてしまうことがあります。



【排尿や排泄の時にふらつく・中腰の姿勢がうまく取れない時】


腰を支えておしっこやうんちの姿勢の補助をしてあげましょう。

足回りやお腹が汚れてしまうことも多いので、こまめに拭いて清潔にすることも大切です。

水がいらないドライシャンプーなどで拭き取ってあげると良いでしょう。



【おもらしをしてしまう】


おむつの使用をおすすめします。
犬専用の紙おむつもありますし、人の赤ちゃん用の紙おむつにしっぽを出す穴をあけ、テープが背側にくるようにして使うこともできます。



【自然に排尿や排泄することができない】


膀胱におしっこがたまっているのにでないときは、下腹部の膀胱のあるところをやさしく両手で挟んでおしり側に押し、圧迫排尿します。


便秘の場合、仰向けに寝かせておなかに「の」の字を書くようにマッサージしたり、オリーブオイルをつけた綿棒を肛門に少し入れて小さくまわしたりして排便を促しましょう。



3.入浴の介護

老犬になると、排尿や排泄で体を汚しがちになるのでこまめなお手入れが必要です。

若いころと比べて体力も落ち疲れやすくなっているため、シャンプーは暖かい日・暖かい時間帯を選び、人に手助けしてもらいながら手短に済ませましょう。

シャンプーする際は洗面器などにあらかじめシャンプー液を入れ、お湯で泡立てておくと良いでしょう。

また、吸水性の高いタオルを使用することで拭き取りもスムーズに行えます。
転倒防止の工夫もしたいものです。
浴室の床には、ヨガマットやバスタオルなどを敷いてすべらないようにしましょう。

寝たきりや立てない犬の場合は、水がいらないシャンプーや蒸しタオルで体を拭いてあげましょう。

拭くだけでは汚れが落としきれない時には、部分浴を行います。
その際、レンガなどを置いて傾斜をつけたスノコを敷いて洗うと、体全体を濡らさずに済みます。

4.歩行の介護

老犬になると積極的に運動をさせるよう心がけていないと急に筋肉がやせ細ってしまいます。
そうなると、さらに歩くことを嫌がるようになり、自分で立ち上がることすらできなくなって寝たきりになるのを早めてしまいます。


疲れやすくなり、距離が短くなってきても、お散歩はさせるようにしてあげましょう。


歩くときにふらふらしてしまう場合、下半身が弱っていることが考えられます。
ハーネスやウォーキングベルトを使って腰を支えてあげます。


飼い主様の負担が大きくなってきたり、支えるだけでは歩けないといった場合、車椅子を使用することも考えられます。


また、運動の前に足のストレッチやマッサージをしてあげると、体を動かしやすくなります。



5.床ずれの介護

寝たきりになってしまった場合、気をつけたいのが床ずれ。

長時間同じ姿勢で寝ていると体の一部分だけが圧迫されて血流が悪くなってしまい、皮膚や筋肉の壊死をおこすことで生じます。

また、排尿や排泄で皮膚が汚れ、ただれることも原因となることがあります。

予防のため、こまめに寝返りをうたせ、姿勢をかえてあげます。

ベットを柔らかいものにすることも大切です。数枚の梱包用気泡シートと毛布を重ねるなど、家にあるもので工夫することもできます。

最近では老犬介護用に低反発素材を使った床ずれ防止マットも市販されています。
ドーナツクッションなどを用いて、患部を床から離すことも大切です。

床ずれはとても進行が速く、あっという間に悪化してしまいます。
寝返りを打たせる時など、こまめに体をチェックしてあげましょう。
床ずれができてしまった場合、できるだけ早く獣医師の治療を受けるようにしてください。


 

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高齢犬の認知症